Sustainability, circulation, and life – KYOUGI ‘SHIKI’
自然と暮らしの廻りあわせ – KYOUGI ‘SHIKI’
木を薄く削り作られる「経木」。例えば、さっと揚げたり、パリッと焼いた肉や魚の下に敷くものとして、コトコトと時間をかけて火を入れる煮物の落とし蓋として、キュッと握ったおにぎりを包む時などに使われる、日本の伝統的な天然の包装材です。通気性、抗菌性に優れ、ほのかな木の香りをまとう経木は、ひらりとしており、見た目はシンプルそのもの。そんな経木の昔ながらの使い方とこれからの使い方を提案する、株式会社やまとわの信州経木「SHIKI」に、同じものは一つとしてありません。木目、大きさ、節目は木によって異なるため、安定した品質で使いやすい経木を作るには、職人の技と経験が必須なのです。
信州経木「SHIKI」は、日本の漢字で表すと、さまざまな意味を持つところから名づけられました。例えば、何かの下に敷くもの「敷き」、何かと組み合わせて新しいものを織りなすもの「織」、その素材となる木材を生み出す信州の豊かな「四季」、そして自由自在に形を変えるまさに紙の木としての「紙木」。一番簡単な使い方は、おにぎりを包むのに使うことでしょうか。包を開けるとふわっと広がる木の香りが、食事の楽しみをさらに引き立たせます。他にも、揚げ物や焼き物の下に敷けば、余分な油分や水分を吸い取ってくれる経木。さらに、まな板代わりに経木を使えば匂い移りを防ぐことができるなど、日々の食卓にも経木は大活躍します。
現在、信州経木「SHIKI」の原材料は、伊那谷のアカマツのみ。その理由の一つが「マツ枯れ病」です。伊那谷は、このマツ枯れ病に悩まされており、この病気になってしまったアカマツは、材木としては使うことができません。何十年という長い年月をかけ育ててきた木でも、病気にかかると被害拡大を防ぐために薬品処理か、焼却処分をせざるを得ないのです。そのような状況を救うために、伊那谷の人々は、廃棄されてしまうアカマツを経木として活用することに。「材木としては使えなくても、古くから生活に使われてきた経木としてなら十分にその機能は果たせる」。まさに、資源の有効な活用法として古くて新しいのが、信州経木「SHIKI」なのです。
林業を営み、森で暮らす人々の工夫から生まれた経木。人の手を入れず放置すると、陽の光も入らなくなり、森は荒れ、その価値も下がってしまいます。森に分け入り、日々丁寧に手を入れ、その資源を人々の生活に還元するという循環は、森にとっても大切なことなのです。もちろん、予測不能な自然現象に左右される森の暮らしは、簡単なものではなく、人々の並々ならぬ忍耐と培われた経験が必要です。しかし、そこから生まれたのが「経木」。森の暮らしをより身近に感じるために、まず食卓の一皿から、経木を取り入れてみてはいかがでしょうか。日々の暮らしにそっと彩りを添えてくれることでしょう。