Depth of the Sake Experience – LY YOULIN
日本酒の奥深さと体験 – LY YOULIN
匠な日本酒造りには、綺麗な水と芳醇な米は欠かせない。日本酒は、日本ならではの風土が生むこれら二つの恵みを、知恵と技術をもって試行錯誤を繰り返しながら受け継がれてきた文化の一つだ。日本酒造青年協議会は「日本酒」という伝統がその誇りを失わないよう、「酒サムライ」という若手蔵元集団を結成した。現在、フランスで日本酒の素晴らしさを多くの人に届けるため日々奮闘するひとりの酒サムライがいる。
Ly Youlin氏が、日本酒と出会ったのは、日本へ留学した高校時代。数年を経てワーキングホリデーで京都に訪れた後、拠点をフランスに移し「居酒屋Youlin」をオープン。2010年には「SOLA」を立ち上げ翌年2011年にはミシュラン一つ星を獲得、2015年にはレストランとプロモーションの両軸を担う「La Maison Du Sake」を開業した。Youlin氏をここまで日本酒に惹きつけた物は何か。初めて、お寿司と一緒に日本酒を味わった時に受けた衝撃は忘れられないと言うYoulin氏は、京都でワーキングホリデーをしている時に働いていた居酒屋で様々な日本酒と出会ったという。様々なお酒と出会い、その違いがわかるようになると日本酒の奥深い魅力にどんどん嵌っていったYoulin氏が、原点としている考えは、「日本酒は食事と共にある」ことである。
日本酒の「美味しさ」に対するイメージが希薄なフランスで、日本での経験を生かし、彼はフードペアリングを武器に日本酒のプロモートを始めた。日本酒作りに欠かせないのは「水・米・人」であると考える彼のコンセプトは、La Maison Du Sake内にも表れており、 Restaurant ERHは、「Eau(水)」「Riz(米)」「Homme(人)」の頭文字を取り名づけられたそうだ。Restaurant ERHでは、ペアリングしたお酒の銘柄をあえて伝えずお客さまに勧める。そうすることで、先入観をもたず口に含んだ時、日本酒の美味しさがピュアに伝わり、お客さま自身が日本酒を周りへ広めてくれるようになった、とYoulin氏は言う。その彼が、今注目しているのは長野県の日本酒。現在、ペアリングで提供している長野県の日本酒は、特に人気が高いそうだ。澄んだ水流と豊かに酒米が育まれる長野県で造られる日本酒は、味わいの重みと深み、そして他の日本酒にはないフルーツに似た酸味が特徴で、アペリティフ(前菜)とペアリングされる。日本酒を初めて飲む方やあまり慣れていない方にも好まれ、フランスでは食後にいただくチーズとの相性も抜群に良いそうだ。
Youlin氏いわくとても綺麗で水の旨みを感じる長野県の水には、森の中でマイナスイオンを浴びるような、すっと入ってくる味わいを感じるのだそうだ。「綺麗な水、丁寧に育てられた米、そして人が手を取り合い心を込めて造る日本酒の魅力は、口に含んだ瞬間に伝わるもの」と考えるYoulin氏は、長野県の風土や造り手の想いに触れ、今後、ローカルな酒蔵にもっと注目していきたいと語っていた。目まぐるしく変わりゆく時代、厳しい日本の風土にきりりと立つ「美」を形にしたような日本酒は、伝統・文化の尊厳を守る存在と言っても過言ではない。酒サムライの闘いはこれからも続く・・・。