A warm, close community – ONSEN
心と身体の潤いの源 – 温泉
日本人は古くから友人や家族、恋人と共に、温泉を楽しんできました。温泉文化は日々の入浴から特別な時間を過ごす時まで、日本人の生活に深く根付いた大切な存在です。日本には温泉に関する法律があるほどで、地中から湧き出る水の温度が25度以上、または天然鉱物が一定量以上含まれているものが「温泉」と定められています。
高い山々に囲まれた長野県の冬は厳しい寒さと共に雪も多く、山々に降り積もった雪は長い年月をかけ地下水となり、人々の生活に潤いをもたらしています。温められた地下水が地上へ噴出する温泉もその1つと言えるでしょう。県内を走る世界屈指の断層や、全域に広がる新旧火山の分布によって湧き出す温泉の泉質も多様性に富んでいます。長野県には200以上の温泉地があり、温泉を利用した公衆浴場数は700カ所以上と全国1位を誇ります。温泉王国ともいえる長野県には、温泉に浸かることが一日の始まりや終わりの習慣として根付いています。例えば、県の中央部に位置する「上諏訪温泉」や「下諏訪温泉」では温泉供給契約を結ぶことで、源泉を各家庭に引き、利用することができるそうです。
生活と料理:日常に根付く長野の温泉文化
また、県の北部にある「野沢温泉」には「麻釜(おがま)」の名で親しまれる、源泉が噴出している湯だまりがあります。源泉は弱アルカリ性単純硫黄泉で約90度。地元の人々は「麻釜」で野菜や卵をゆでるなど、生活の場として活用しており、「野沢温泉の台所」ともいえる存在です。温泉卵は、温泉地周辺の宿で出される伝統的な名物料理。しょうゆをかけて食べることが多く、卵の黄身は柔らかく汁気も多いので、丸ごと飲み込むこともあります。日本の温泉を堪能する際には、温泉卵を食べてみるのはいかがでしょうか。古くから人々の心と体に潤いをもたらしてきた温泉ですが、20世紀中頃には乱掘によって、一時源泉が枯渇する傾向が出始めました。そのため、日常生活において欠かせない貴重な天然資源の温泉を守り、泉質に富んだ長野県の温泉を適正に利用していくための取り組みも早くから行われているようです。身近に温泉がないと小旅行を兼ねて温泉を訪れることが多く、それは「特別」で「非日常」的な体験になるのではないでしょうか。長野県にとって温泉は、当たり前の日常に欠かせないものであり、地域コミュニティー形成の一助にもなっています。共に湯につかり、肩の力を抜き、落ち着いた時間を共有する。長野県で感じる穏やかな時間の流れは、温泉で癒され、自分自身と互いを大切に思うところから来ているのかもしれません。