The launch of ‘Nagano Reception’ in Paris, France, blending ingredients from Nagano and molecular gastronomy
フランス・パリで長野県産食材×分子ガストロノミーの「長野レセプション」を開催
2024 年のオリンピック開催を控え、観光客が増加しているフランス・パリ。風土や伝統・文化を大切にし「食」や地域性豊かな街ですが、日本人とは異なる感性や価値観の中で、地域の魅力を更に磨いていこうと長野県は2023年11月3日、フランスのメディア、旅行会社、輸入業者や日本食材の関連者などを招待した「長野レセプション」を開催しました。
これに先立ち数か月前から、物理学者でありフランスが誇る分子ガストロノミー(調理を物理的、化学的に分析)研究者のラファエル・オモン氏の協力を得て、長野県の魅力を「食」の観点からアレンジするプロジェクトが進んでいました。ラファエル・オモン氏が、実際に長野県各地を訪れ、食材に触れながらその歴史や背景について学び分析を行うものです。
初回の分析対象に選ばれたのは、長野県の代表的な食材である味噌、北アルプスの清冽な雪解け水により育まれるわさび、冷涼な地域性を感じる寒天です。分子レベルで分析し情報として活用できるよう物理的、化学的な観点から食材の良さを生かすデータを抽出。長野レセプションでは分析結果が発表されるとともに、その結果を生かした料理が提供されました。
会場は、オペラ地区にある5つ星ホテル「ロック・ホテル&スパ」。まず、長野県産日本酒をベースにした2種類の日本酒カクテルがアペリティフとして提供されレセプションはスタートしました。
日本酒カクテル
・黒松+青リンゴ(サンジェルマン)、レモン、ライチジュース
・白貴天龍+シタデルジン、ニワトコの花のシロップ、果実入りリンゴジュース
・白貴天龍+シタデルジン、ニワトコの花のシロップ、果実入りリンゴジュース
冒頭、阿部知事から長野県の国際化に向けた熱のこもった挨拶があり、長野県と同じように風土や伝統・文化を大切にするフランスで、長野県の魅力を磨きあげていきたいという思いが食の分野に留まらず、製造業や観光の分野まで、言葉の一つ一つから熱意が伝わってきました。
そしてメインイベントとなるラファエル・オモン氏とホテルシェフのセルジュ・ジュアナン氏とのコラボレーションによる料理の試食会では、驚きの組み合わせの5品が提供されました。
提供されたメニュー
青リンゴ、ライチ、日本酒を合わせた生牡蠣の前菜
ライチ果汁の優しい甘さを長野県産寒天で固め、牡蠣の持つヨード香ミネラルを合わせた。
長野県産白味噌仕立てのホタテの貝柱 コーヒー風味と味噌パウダーのキノコ添え
ホタテのポワレの香ばしさと味噌の持つコク、旨味を焼いた事によって生じるアミノ酸の旨味と味噌の香ばしさ(キャラメル香)と、コーヒーの香ばしさ、軽やかな苦味と合わせた。
大豆、トリュフ、セロリを合わせたフォアグラ料理
長野県産寒天の醤油パールトッピング半熟のフォアグラ、トリュフに、長野県産寒天を使いパール状にした醤油ソースをトッピングした。
長野県産寒天を使ったわさびチョコレートムース
チョコレートの持つコクとカカオの苦味を、長野県産寒天により軽やかに仕上げ、長野県産の粉わさびと本ワサビの擦りたてをほんの少し加える事によって、わさびの青いノートの爽やかさがムースを個性的に引きたてた。
白味噌の液体窒素即席アイスクリーム
初めにアイスクリームの素となる卵クリーム液を作って置き、そこに長野県産白味噌(口当たりの良さの為、滑らかに濾してある味噌が良い)を溶かして置く。液体窒素を少しずつ入れ、泡立て器で撹拌した “出来立て白味噌アイスクリーム” 。
ラファエル・オモン氏の分析結果を少し紹介すると、帆立貝は味噌の旨味の発酵と、低温によるメイラード反応(加熱により糖とアミノ酸間に起こる反応)で、食品が香ばしくなり、コーヒーの焙煎風味、メイラード反応と微量の酸がもたらす効用によりさらに美味しさが増すとのこと。また寒天は、分子学的には寒天の分子がコレステロール値の改善や抗がん作用に働くといわれています。
ラファエル・オモン氏によるプレゼンテーションの後、実際に料理を試食した招待者は皆、意外性あるフードペアリングの見事な味わいに驚いている様子でした。
レセプションは、アットホームで和やかな雰囲気に包まれ、阿部知事を囲み来場者とスタッフ全員の集合写真の撮影で幕を閉じました。
参加者から、「長野県について、産品を通じてよく知ることができました。食材と料理の関連性を科学的に分析する分子ガストロノミーのアプローチは、フランスでは “エコロジーの未来” を想定するうえで重要となる分野です。このコラボレーションは、本当にサプライズのある興味深いコンセプトでした」との感想も聞かれ、これまでにない文化交流の場になったといえる今回の「長野レセプション」。
ラファエル・オモン氏が「食材には無限の可能性がある。長野県ならではの産品をそのまま和食に使おうとするのではなく、是非、フランス料理に取り入れる可能性も考えてほしい」とプレゼンテーションを締めくくったように、四季の彩り豊かな自然と共に生き、厳しい自然環境の中、生き抜くための創造性によって培われてきた長野県の伝統・文化は、新たな視点も得ながらその輝きを力強く未来へ繋いでいこうとしています。